ルッカ Lucca_1
フィレンツェから鉄道を利用して、1時間半ほどで到着します。駅は街の南にあり、市内には、城門 (Porta San Pietro) を通って入ることになります。
ルッカの旧市街は、高さ12mの城壁が周囲4kmにわたり囲んでいます。城壁には11ヵ所に堡塁があり、それぞれに名前が付いています。駅前に見えるのは聖コロンバーノ堡塁で、サンピエトロ門の脇はサンタマリア堡塁です。6ヵ所に城門があります。
旧市街では、どこに行くにも徒歩で廻ることになりますが、道も整理されており、コンパクトにまとまっているので、迷うこともありません。
旧市街には3ヵ所に重要な博物館があり、どれも特徴があるので、全て訪問されることをお勧めします。
グイニージ博物館 (Museo Nazionale di Villa Guinigi) は街の東端にあり、エトルリア時代の墳墓からの埋葬品を始め、ローマ帝国時代の遺品や、鋳造貨幣、メダルの他、バルトロメオ (Fra Bartolomeo) の「慈悲の聖母」や、プッチ (Ambrogio &Nicolao Pucci) 作の内陣座席の背板寄木細工、また聖ミケーレ聖堂の彫刻柱の原形を身近に見ることができます。規模も一番大きく収容件数も非常に多く、見ごたえがあります。
マンシ博物館 (Museo Nazionale di Palazzo Mansi) は街の西端にあり、中世以来の豪邸をそのまま使用しています。展示されている絵画は15世紀から18世紀のメディチ家のコレクションが中心で、ベッカフーミ (Beccafumi)、ブロンズイーノ (Bronzino)、ポントルモ (Pontormo) 等の作品が見られます。また調度品や豪華な装飾の施された室に見るべき物も多くあります。
ドゥオーモ博物館 (Museo dell'Opera del Duomo) はドゥオーモの脇にあり、ヴォルトサント (Volto Santo) の金の衣装の他、聖遺物容器や金細工等が展示されています。
ローマ時代の円形闘技場跡 (Piazza dell’Anfitiatoro) は円形に建屋が取り巻き、中央はマーケットになっており、市の立つ日には多くの野菜・果物・衣類・日用雑貨・お土産物などの出店で賑わいます。
音楽好きの方にはプッチーニの生家がある街として有名でしょう。生家は現在博物館となっており、使用したピアノや衣装が展示されています。
1. Duomo ドゥオーモ (Cattedrale di San Martino) サンマルティーノ大聖堂
2. Chiesa di San Cristforo 聖クリストフォロ聖堂
3. Chiesa di San Francesco 聖フランチェスコ聖堂
4. Basilica di San Frediano 聖フレディアーノ聖堂
5. Chiesa dei Santi Giovanni e Reparata 聖ジョヴァンニ・エ・レパラータ聖堂
6. Chiesa di San Giusto 聖ジュスト聖堂
7. Chiesa di San Matteo 聖マッテーオ聖堂
8. Chiesa di San Michele in Foro 聖ミケーレ・インフォロ聖堂
9. Chiesa di San Micheletto 聖ミケレット聖堂
10. Chiesa di San Pietro Somaldi 聖ピエトロ・ソマルディ聖堂
以下は「ルッカ Lucca 2」にページ移動します。
11. Chiesa di San Romano 聖ロマノ聖堂
12. Chiesa di San Salvatore 聖サルバトーレ聖堂
13. Chiesa di San Tommaso 聖トマソ聖堂
14. Chiesa di Santa Maria Corteorlandini サンタマリア・コルテオルランディーニ聖堂
15. Chiesa di Santa Maria Forisportam (Santa Maria Bianca) サンタマリア・フォリスポルタム聖堂
16. Chiesa della Santissima Trinità 聖三位聖堂
18. Chiesa di Sant'Andrea 聖アンドレア聖堂
19. Chiesa dei Santi Paolino e Donato 聖パオリーノとドナート聖堂
20. Chiesa dei Santi Giovanni e Reparata 聖ジョバンニとレパラータ聖堂
1. Duomo ドゥオーモ (Cattedrale di San Martino) サンマルティーノ大聖堂
サンピエトロ門から市内に入り、ナポレオン広場から東に向かうと大聖堂の正面前広場に出ます。
6世紀にフレディアーノ (Frediano) 司教により建立されましたが、8世紀に聖人、殉教者の聖遺物が移送されてきたことから改修され街の司教座聖堂となっています。現在の大聖堂は14世紀から15世紀に修復されたものです。
正面右手の鐘楼は、60mあります。
鐘楼のアーチ型の窓は下から順に1ヵ所から4まで増えて行きますが、最上階も4ヵ所と、二段続いているのが特異です。
聖堂の正面には三ヵ所の大きなドームが並び、中央の上には聖マルティヌスと貧者の彫刻が飾られています。外で見られるのはレプリカで、原像は聖堂を入り、振り返って見上げると展示されています。
アーチの上には三層の柱廊が並び、細めの柱は渦巻き状のものだけでも色々な種類があり、怪獣が彫り込まれている柱もあります。柱一本一本を丁寧に見ていくと、思わぬ発見があります。
アーチの上にも牛や馬等の動物や想像上の怪獣が並んでいます。なお、柱の原形はグイニージ博物館 (Museo Nazionale di Villa Guinigi) で間近に見ることができます。
蛇が人を呑み込む図柄はヴィスコンティ家 (Vistonti) の紋章です。正面の彫刻を見ているだけでも時間が経つのを忘れてしまいます。
中央扉口上のティンパヌムには荘厳のキリストが、その下には聖12使徒の浮彫が並んでいます。
左側はピサーノ (Nicola Pisano) 作「マギの旅」と「キリスト降下」が、右手には12ヵ月の農作業を表す浮彫があります。
聖堂はラテン十字型の三廊式で、中央主祭壇奥のアプシスは15世紀作成のステンドグラスです。17世紀に描かれた上の大きなフレスコ画には聖三位一体の下に聖堂を捧げる司教が見えます。
幅が27mあるのに対し、27.5mの高い天井は天空を表す紺碧色で、4大福音書記者が描かれているのが分かります。
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左側廊の中程にマッテオ (Matteo Civitali) 作の八角形のヴォルトサントの祭壇 (Tempietto del Volto Santo) があります。この祭壇は大理石製で、前面の格子網から奥にキリストの磔刑像を見ることができます。
聖顔 (Volto Santo)について
「聖顔」とは、崇敬用のイメージの換喩的名称を指します。
大聖堂に安置されている「聖顔」は木製のキリスト磔刑像です。742年に聖地パレスチナから海路で運ばれルッカにもたらされたとされる、磔刑のキリストの全身像です。ただし現在の像は12世紀に制作されたものと推測されています。
磔刑のキリストは苦しみの表情ではなく、畏敬の念を抱かせる王の姿をしており、通常見られる腰布だけの裸体ではなく、長いトゥニクを身にまとっています。更に、うなだれる姿ではなく、面長な面立ちで大きく目を開き、長い髭を蓄え、髪は十字架に沿って両肩に垂れ下っています。
『伝説』では、ギルフレドゥス司教がエルサレムに巡礼した際に、夢の中で天使により、イエスの弟子であるニコデモにより作成された「聖顔」の存在を教えられます。ニコデモは磔刑のキリストを十字架から降ろした人物でしたので、キリストの身体的な形の量と質を良く理解し得たのでした。
しかし「聖顔」は全てがニコデモにより作成されたわけではなく、「聖顔」のキリストの顔部分は天使により一夜にして作成されたとされています。ここに、人間の手に因らずに作成された「聖顔」の重要性があります。
司教はこの「聖顔」を手に入れ、イタリアに移送することにしましたが、「聖顔」を載せた船は眼に見えない手に導かれてルーニの港に着きます。ルッカの司教、ヨハネスの尽力でルーニからルッカにもたらされることになり、「聖顔」のルッカ入城はキリストのエルサレム入城と同様の歓喜を持って迎え入れられた、と伝えられています。
その後、多くの書物により、「聖顔」の存在が流布さて、「聖顔」はルッカの市民のみならず、12~16世紀にかけてヨーロッパ中から巡礼者を集め、大いなる崇敬を受けることになります。そして12世紀に新たな逸話が作成されます。
フランスから来た旅芸人が、多くの巡礼者が高価な捧げ物をする中で、自分は貧しくて何も捧げるものがないので「聖顔」に向かい音楽を奏でたところ、その像が右足に履いていた銀の靴を授けてくれました。しかし、旅芸人が人々に泥棒と間違えられてしまうと、さらに左足の靴も授けてくれて濡れ衣を晴らしてくれた。ということです。
「ヴォルトサント」の詳細については、以下の「水野千依」氏の「西洋服飾の史的事象によるジェンダー論」P37~39も合わせてご覧ください。
http://dspace.bunka.ac.jp/dspace/bitstream/10457/1423/4/011080210_20_3.pdf
右側廊の三番目にはティントレット (Tintoretto) 作「最後の晩餐」があリます。
その奥の部屋には、ヤコポ・クエルチャ (Jacopo della Quercia) 1407年作の「イラリア・デルカレット (Tomba di Ilaria del Caretto) の墓」があります。ゴティック様式とルネサンス様式が調和した15世紀初頭の作品で、繊細で洗練された人物の彫刻を見ることができます。
大聖堂の後陣を外から見るとアプシス部分が半円柱形で膨らんでおり、アーチとその上部に柱廊 (Loggia) が見事に調和した美しいフォルムを見ることができます。正面だけでなく、後ろに廻って見ることをお勧めします。
2. Chiesa di San Cristforo 聖クリストフォロ聖堂
正面は白大理石で覆われ、扉口を含めて五つのアーチがシンメトリーに並んでおり、ロマネスク様式の均整のとれた美しい聖堂です。
扉口は白と黒の縞模様の抱柱が競り出ています。楣石はアカンサス模様の彫刻が施され、アーチの台座にはライオンの彫刻があったと思われます。
良く見ると羽の生えた怪獣や、人と怪獣との格闘など、細かな浮彫も見えます。ロマネスク様式の聖堂の面白さです。上には薔薇窓があります。
聖堂内は三廊式で、柱の一部にはフレスコ画も見えますが、現在では各種の展示場として利用されており、聖堂の役割を果たしていません。
3. Chiesa di San Francesco 聖フランチェスコ聖堂
街の東端に位置する大きな聖堂で、市内を流れる運河の更に奥にあります。前には広い広場があり、聖堂を正面から見渡すことができます。
赤煉瓦造りの聖堂ですが、正面は白と黒の大理石が縞模様を成し、扉口の上のティンパヌムには聖母子のフレスコ画が見えます。左右には屋根付きの墓石が置かれています。
聖堂内は単廊式で、中央祭壇にはキリストの磔刑像が飾られ、アプシスはステンドグラスです。天井は桁組の木天井で、他のフランチェスコ聖堂と変わりがありません。
左右側面にある祭壇には絵画が飾られています。
他のフランチェスコ聖堂でも見られることですが、大きな単廊式の構造から、音楽会や展示場などに貸し出していることがあります。
訪問時にも学生の音楽発表会を開催していました。
なお、聖フランチェスコ聖堂の脇を進むとグイニージ博物館 (Museo Nazionale di Villa Guinigi) に至ります。
4. Basilica di San Frediano 聖フレディアーノ聖堂
聖ミケーレ・インフォロ聖堂の前の広場の北西端のカルデリア通り (Via Calderia)を北に向かうと、聖サルバトーレ広場 (Piazza del Salvatore)に出ます。そのままアジリ通り (VIa degli Asili)を北上し、サンジョルジョ通り (Via San Giorgio)に出たら右折して一本目のチェザーレ・バッティスティ通り (Via Cesare Battisti)に左折します。
道に沿って進むと聖堂に突き当たりますので、右折すると聖堂前のサンフレディアノコ広場 (Piazza San Frediano)に出ます。
聖堂前の広場から正面を見上げると、13世紀に制作された大きなモザイク画で「玉座のキリスト」が描かれています。その下には中央の窓を挟んで6人ずつ聖使徒がキリストを見上げています。その下の柱は主としてイオニア式の柱頭で飾られています。
白大理石で覆われた正面には3ヵ所に扉口があり、左手奥には高い鐘楼が見えています。
聖堂内部は二列に柱が並び三廊式の様相をしていますが、両脇に礼拝堂が並ぶ五廊式の大きな聖堂です。
アプシスにはステンドグラスがあります。
正面の扉口を振り返ると左手に「聖母子」、右手に「御訪問」が掲げられています。その上にはオルガンが置かれています。
扉口を入ってすぐの右手には12世紀制作の八角形の大きな洗礼盤が置かれていますが、その台座はヤコポ ・クエルチヤ(Jacopo della Quercia) 作の聖書を題材とした浮彫で飾られています。
更にその奥には聖ファウスティナ (Santa Faustina) の礼拝堂があり、ピエトロ ・ソッリ(Pietro Sorri) 作の「殉教図」が見られます。
また、左手奥のタレンティの礼拝堂には、ヤコポ・クエルチヤ (Jacopo della Quercia) 作の大理石の祭壇画で、「聖母子と聖人」の浮彫があります。
更に聖オウガスティンの礼拝堂 (Cappella del Sant’Augustinus) の左壁にはアミーコ・アスペルティーニ (Amico Aspertini) 作のヴォルトサント (Volt Santo) がルッカに入城した際を描いたフレスコ画があります。
ヴォルトサントとは、Volto(顔) Santo(聖なる)で「聖顔」を意味します。天使によって完成されたこの木製のキリスト磔刑像は、カロリング朝時代の742年に聖地パレスチナから海路で運ばれてこの地ルッカに到達したとされています。
詳細は → ドゥオーモ 大聖堂のVolto Santo を参照ください。
そして、右側面には「キリスト生誕」と「架橋」のフレスコ画を見ることができます。
天井画は天使と、預言者たちが神を囲んでいます。マッセオ (Masseo Civitali) 作の聖フリジーディアン (San Frigidian) と聖オウガスティン (Sant’Augstinus) の木彫があります。
5. Chiesa dei Santi Giovanni e Reparata 洗礼者聖ジョヴァンニ・エ・レパラータ聖堂
大聖堂の前のアンテルミネッリ広場 (Piazza Antelminelli)に面しています。
正面は白大理石で飾られ、扉口は一カ所だけの小さな聖堂のように見えます。しかしながら大聖堂博物館からこの聖堂の裏側を見ると分かるように、初期キリスト教時代の聖堂の遺構の上に5世紀、8世紀、9世紀と幾層にも渡って聖堂が改修されていた痕が残る、大きな聖堂です。
正面扉口の上の楣石には中央に聖母、その両脇に大天使と聖12使徒の浮彫が見られ、アーチの礎には背中で柱を支える人物像(テラモン)とその脇にライオンの彫刻が見られます。典型的なロマネスク様式の扉口です。
聖堂内は三廊式で、アプシスの上の半円蓋には聖母被昇天がフレスコ画で描かれています。
柱頭飾りとして、アカンサスの他、ロマネスク特有の想像上の動物の彫刻も見えます。
側面には聖母子のフレスコ画も残っています。
中央祭壇の左手の八角形のドームの下に降りて行くと、
初期聖堂の洗礼盤の跡が見えます。
更に進むと現在の聖堂の基盤部分も見ることができます。
聖堂の構造の変遷を示す史料もあり、図面を見ながら周囲を見渡すと、聖堂の歴史が見えてきます。
6. Chiesa di San Giusto 聖ジュスト聖堂
聖ミケーレ・インフォロ聖堂 の前の広場の東側から南のサンピエトロ門 (Porta San Pietro)に向かい、ベッケリア通り (Via Beccheria)を進み、一本目のペスケリーア通り (Via Pescheria)を左折します。
突き当たりを道なりに右折し、コルテデル・ビアンコネ通り (Corte del Biancone)を進むと聖堂前の広場 (Piazza Sun Giusto)に出ます。すぐ近くです。
または、ドゥカーレ宮殿 (Palazzo Ducale di Lucca)前のナポレオーネ広場 (Piazza Napoleone)北側の通りを東に向かい、XXセッテンブレ広場 (Piazza XX Settembre)からサンジュスト広場 (Piazza Sun Giusto)に名前が変わったら、左折すると聖堂前に出ます。
聖堂の正面には扉口が3ヵ所あり、中央の扉口の柱は白大理石のコリント式柱頭飾りが施され、楣石にはアカンサス模様の浮彫があります。
良く見るとアカンサスに取り付いているライオンの姿が見られます。アーチの礎石にはライオンの彫刻が載り、ティンパヌムには聖母子画が見えます。
中央扉口の真上のニ連のアーチ型の窓と左右の扉口の上の丸窓が水平に並び、それ以上を白と緑の縞模様の大理石でアクセントをつけています。上段と最上段には五個の柱廊が見られ、シンメトリーのバランスの良いロマネスク様式の聖堂です。
聖堂内は三廊式で、アプシスには聖母像が飾られています。外観と異なり、聖堂内はバロック様式に改装されています。
7. Chiesa di San Matteo 聖マッテーオ聖堂
聖ミケーレ・インフォロ聖堂の前の広場の中央から西に進むポッジョ通り (Via di Poggio)を進み、突き当たりをディピント宮広場 (Piazza del Palazzo Dipinto)に右折し、トーロ通り (Via del Toro)と名前が変わる手前の細いブルラマッキ通り (Via Burlamacchi)に右折します。
そのまま北上すると通りの名前がサン・マッテオ広場(Piazza San Matteo)と変わった右側にあります。
中央には扉口が一つあり、元のティンパヌムの箇所にはガラスがはめられて、明り取りに改装されています。上に尖塔形の窓が二個並び、丸窓があるロマネスク様式の小さな聖堂です。
現在聖堂としての機能は果たしておらず、製材工場として利用されています。
ルッカには多くの聖堂がありますが、全ての聖堂が遠くからその場所が分かるような大きな建物ではなく、鐘楼を備えているとも限りません。この聖マッテーオ聖堂も小さな聖堂の一つです。
探し当てた結果が既に聖堂の機能を果たしていないのを見るのは、残念なことです。
聖堂としての役割を果たしておらず、廃院となっても、建物として別目的で利用されている例は多くあります。
街の西端にある、聖十字架聖堂 (Chiesa del Crocifisso dei Bianchi) や、街中にある、サンタマリア・デイ・セルヴィ聖堂 (Santa Maria dei Servi)、また、聖サッフラージオ聖堂 (Chiesa del Suffragio)や、聖ジュリア聖堂 (San Giulia) や、聖クリストフォロ聖堂 (San Cristforo)、さらに、東端にある聖ミケレット聖堂 (San Micheletto) 等も聖堂としての役割を果たしていません。
美術館や展示会館、劇場や音楽堂、学校、工場など、使用方法は多岐にわたります。
このように、聖堂として廃墟となり、放置されたままになっていたり、別目的で使用されている例は、ルッカに限らず多くの地方で見られます。
8. Chiesa di San Michele in Foro 聖ミケーレ・インフォロ聖堂
サンピエトロ門 (Porta San Pietro)から市内に入り、二手に分かれた左側のフランチェスコ・カッラーラ通り (Via Francesco Carrara)を進み、一つ目のサン・ジローラモ通り (Via San Girolamo)に右折して真っ直ぐ北に進むと、ナポレオーネ広場 (Piazza Napoleone)に出ます。通りの名前がベッケリア通り (Via Beccheria)からサン・ミケーレ広場 (Piazza San Michele)に変わったところにあります。街の中心にある大きな聖堂で、脇の鐘楼も高いので、街を散策する際の目安になります
ローマ帝国時代には大広場 (Forum) だった所に12世紀から14世紀にかけて建造されたことから "in Foro" と呼ばれるようになりました。
ピサ・ロマネスク様式で、聖堂の正面から見上げると、破風の頂上には青銅製の大きな大天使ミカエルが立ち、両脇には天使がラッパを吹いています。
その下の柱廊は6個のアーチが二層になっており、その下層部の柱廊も14個のアーチが二層になっています。壮大な造りです。
これらのアーチを支える円柱には白大理石に黒の碧眼で幾何学模様を描いた物から、想像上の動物や怪獣、人魚や緑男が彫り込まれたもの、ヘルクレス結びが施された柱など、多種多様な模様の彫刻が施され、豊富な種類のアカンサスの柱頭飾りの中に、天使の姿や天馬も見られ、上には人物の顔が載っています。
良く見ると、ダンテ (下から2段目左から7番目)、ナポレオン3世(下から2段目左から9番目)や、
ヴィットリオ・エマニュエル2世 (下から2段目右から3番目)、法王ピウス2世 (下から2段目右から2番目)等の人物を認めることができます。
正面の扉口上の楣石にも人魚とケンタウロスの浮彫が見られるほか、丸窓上を飾るアーチの礎にはライオンの頭が見えます。
聖堂の正面の右側角には聖母子像が金色に輝く放射状の光背を持って立っています。
聖堂の正面を見ているだけでも見飽きることがありません。双眼鏡やカメラのズームレンズを通して一つ一つ見ていかれることをお勧めします。
なお、早朝と夕方で日光の当たり方が異なりますので、聖堂の正面の表情も微妙に変わります。
聖堂内は三廊式で、外の華やかさと比較すると結構地味な印象です。
中央祭壇にはキリストの磔刑の板絵が飾られています。
右側にはフィリッポリッピ (Filippino Lippi) 作、「聖ヘレナ、聖ジェロニモ、聖セバスチャン、聖ロック」の絵画が見えます。
左右の側廊には祭壇や絵画が掲げられています。
右側中央に説教壇があります。
扉口を入って振り返って見上げると聖母子のフレスコ画があります。
9. Chiesa di San Micheletto 聖ミケレット聖堂
聖ミケーレ・インフォロ聖堂から東に延びるサンタクローチェ通り (via Santa Croce) を進み、聖ゲルヴァシオ門 (Porta San Gervasio) を通ってエリザ通り (via Elisa) に入ると右側に見えてきます。
扉口は小さいものの、右手に鐘楼を控え、奥行きのある聖堂です。
側面の扉口跡には大鳥や人が浮彫にされた楣石が見えます。
現在催し物会場になっており、聖堂としての役割を果たしていません。
10. Chiesa di San Pietro Somaldi 聖ピエトロ・ソマルディ聖堂
円形闘技場跡 (Piazza dell’Anfitiatoro) から東に進むとサンピエトロ・ソマルディ広場に出ます。
正面には3ヵ所に扉口があり、左脇には高い鐘楼が並ぶ三層式の大きな聖堂です。
中央扉口の楣石には鍵を渡される聖ピエトロが浮彫になり、ティンパヌムには聖母子が描かれています。各扉口の上には白と緑の縞模様がアーチを形成し、下層部壁面の白大理石の3本の横縞と共に、建物にアクセントを与えています。
また、両脇の扉口の上には山羊の角のようなアーチ型の柱廊 (Loggia) が配置され、上層部の二重の柱廊の魁となっています。この様な上層部の柱廊はルッカでは良く見かける聖堂建築様式で、その代表はDuomo ドゥオーモであり、聖ミケーレ・インフォロ聖堂です。なお、ここの柱には彫刻は施されてはいません。
聖堂内は三廊式です。
中央祭壇はキリストの磔刑像が飾られているだけで、簡素な印象を受けます。
両側には礼拝所が並び、穹窿天井からは明るい光が差し込んでおり、各絵画も良く見えます。