コモ Como
【アクセス】
ミラノ中央駅から、鉄道でコモ・サンジョバンニ(Como San Giovanni)駅には40分ほどで着きます。ミラノ・ポルタ・ガリバルディ駅からも行くことができます。
なお、Comoという名の付く駅は4か所ありますので、出発する場所により、どの駅に着くのか、どこに到着すると都合が良いのか確認されることをお勧めします。湖に一番近いのはコモ・ノルド・ラーゴ(Como Nord Lago)駅です。
【歴史】
コモには青銅器時代からケルト人が住んでいたとされています。西方との交通の要所であったために、ローマ人が支配し街を建設しますが、ローマ時代の遺跡として各地で見られる円形劇場や競技場は残念ながら残っていません。
8世紀後半にはフランクのカール大帝の支配下に入り、12世紀にはミラノの、18世紀にはナポレオンの軍門に下り、オーストリア、サヴォイア家などの支配を経てきています。
12世紀に建設された城壁の一部が旧市街に残っていますが、その中に40mほどの高さの大きな塔(Porta Torre)があります。5階建てのビルのような独特の造りで、ひときわ目を引きます。
【観光】
ミラノ近郊にあるリゾート都市として、観光客も多く訪れています。コモ湖(Lago di Como)の遊覧船は団体客で賑わっていますし、別荘や豪華ホテルの並ぶ湖畔を散歩するのも楽しみです。なお、登山電車で山の上に登れば見事な眺望を楽しむことができます。
旧市街は湖から東南に広がっていますが、道幅も広く、案内板も整備されています。観光客には優しい街で、ミラノからの日帰り旅行で見て回れる広さです。
1. Duomo di Como コモ大聖堂 (Cattedrale di Santa Maria Assunta)
旧市街の中心にある大きな聖堂です。厳しく管理されており、朝早く訪問しても10時30分以前は入場できません。入口は正面ではなく、北側(右側)から入ります。
聖堂前の広場から聖堂全体の姿を見ることができますし、周囲を回ることもできます。
聖堂の左側に離れて鐘楼が建っていますが、その間を集会所であり、裁判所でもあった建屋が繋いでいます。
聖堂は1396年、ミラノ大聖堂の建設時期とほぼ同時代に、ロマネスク様式で建設された聖堂(Santa Maria Maggiore)をゴティック様式に改修して建設され、1770年に完成しています。
長さ87mでドームの高さは75mある大きな聖堂です。
正面中央の薔薇窓の両側には受胎告知の彫刻が見られ、下には大きな入口と両側に2か所の入口があります。
両端と入口を挟む四本の片蓋柱には人物の彫刻が施され、最上部には尖塔が載っています。
中央入口上のティンパヌムには東方三王の礼拝の彫刻があります。
その上には聖母子を含む、多くの彫刻が飾られています。
左右の入口上のティンパヌムには降誕と神殿奉献の彫刻があります。
入口の両脇ステンドグラスの窓の下には、1世紀のローマ帝国時代の自然学者プリニー(大Pliny)と法律家プリニー(若Pliny)の座像彫像が目立っています。
15世紀になって作成されています。
なお、現在の入口の上のティンパヌムにはピエタが、対面のローマ入口の上にはご訪問の彫刻が見られます。
聖堂内はラテン十字で、三廊式ですが、歩けるのは身廊だけで側廊には入れません。
また、身廊の柱の間には16世紀以降にフランドルで作成された大きなタピストリーが掛けられているので、聖堂内は暗く、側廊に掲げられた絵画を確認することは困難です。
中央祭壇奥のアプシス部分は降誕、最後の晩餐、ピエタ、等のステンドグラスで飾られています。
右袖廊にはキボリウムの中に聖母被昇天の立像があり、
左袖廊には同様にキリストの磔刑像が祀られています。
交差廊の手前両側にはオルガンが設置されています。
現在の入口から入って左手一番奥(右側廊)にはルイーニ(Bernardino Luini:1482年)制作の聖アンブロージョが、正面入口に相当する場所には、八本の大理石の円柱で囲まれた円形の洗礼盤がありますが、1592年製造のものです。
入口から右手二番目には細かな立体的な彫刻の施された三面祭壇画があり、両扉には東方三王の礼拝とエジプト逃避が描かれています。
この対面の左側廊面にはフェラーリ(Gaudenzio Ferrari)作の聖母の結婚があります。
華やかな穹窿天井には歴代の大司教他の人物像が描かれています。
2. San Fedele 聖フェデーレ聖堂
ドゥオーモ前のヴィットリオ・エマニュエーレ2世通り(Via Vittorio Emanuele II)を南下すると聖フェデーレ聖堂の裏手に出ます。
10世紀にあった聖エウフェミア聖堂(Sant'Eufemia)に聖フェデーレの聖遺骨が移葬されたことで、聖堂の名前が変更されています。1120年頃には現在の聖堂の元となった建屋がロマネスク様式で建設されていたと考えられます。
正面から入るには独立通り(Via Indipendenza)との交差点で右折して700mほど進んだところで、パンテロ・パンテラ通り(Via Pantero Pantera)に左折するとサン・フェデーレ広場(Piazza San Fedele)に出られます。
正面には一か所の入口と上に薔薇窓がありますが、20世紀の修復の結果です。
正面の左手にある鐘楼は1117年の地震で倒壊し、1271年に再建されたものの再び崩壊し、20世紀になって再建されたものです。
聖堂内は三廊式ですが、袖廊の周囲に周歩廊のように膨らみを付けて拡張した結果、前方後円墳の様な特殊な形となっています。
交差廊の上には1805年に高さを増した八角形のドームが載っています。
中央主祭壇には15世紀に作成された棺の中に聖フェデーレの聖遺骨が納められています。
中央主祭壇の右手は聖具室ですが、左手は洗礼堂となっています。
入口入って最初の右側に雪の聖母礼拝堂があり、1508年作成とされる、聖母子と聖セバスティアンと聖ロッコが描かれています。
右側三番目に一段と奥まって無原罪の礼拝堂があり、右手袖廊にはキリストの磔刑祭壇があり、脇には磔刑への道行と聖シスト(San Sisto)の死が描かれています。
入口から左側には、聖リタ(Santa Rita)礼拝堂が、無原罪の礼拝堂の対面に当たる場所にあります。左袖廊には聖母の祭壇があり、その奥には執り成しの祭壇があります。
3. San Giacomo 聖ジャコモ聖堂
大聖堂(Duomo)の左手にある鐘楼の奥にあります。大聖堂広場(Piazza del Duomo)から聖堂の正面を見ることができます。
中央の交差廊の上には八角形の塔が載っています。
11世紀に建設されたロマネスク様式の聖堂です。
正面は1585年に改修され、四本の片蓋柱が入口を挟んで上層階まで貫いているように見えますが、両脇の壁龕と上の窓を除き、だまし絵の効果を狙って描かれたものです。
聖堂内は三廊式で、中央祭壇には聖ジャコモが祀られ、右手の祭壇には聖ジョゼッペが祀られています。
右袖廊にはキリストの磔刑礼拝堂が、左袖廊にはロザリオの聖母礼拝堂があります。
掲げられている絵画やフレスコ画は17世紀から18世紀の作品です。
4. San Provino 聖プロヴィノ聖堂
大聖堂(Duomo)の裏手、北東にある古い聖堂です。聖堂の前には広場もなく、聖堂の裏手にも回ることができない程奥まった所にあります。
正面の右側に鐘楼があります。元は、聖アントニオ聖堂でしたが、1096年に聖プロヴィノの聖遺骨が移葬されたことから、聖堂の名前が変わっています。
1295年以降は聖アボンディオ修道院(Monastero di Sant'Abbondio)の修道院長によって、この聖堂の牧師が任命されていました。
聖堂入り口左にある「プレート」
(Google翻訳結果)
「ルーマニア総主教庁
ヨーロッパの大都市
西部と南部
イタリア教区
ルーマニア正教教区
聖司祭グレゴリー・パラマス、コモ(11月14日)」
聖堂内は単廊式で、左側面に礼拝堂が4か所並ぶ構成となっています。
中央主祭壇は聖プロヴィノ祭壇で、左側には主祭壇から順に磔刑の礼拝堂、聖アンジェロ(Angelo Custode)礼拝堂、聖ロッコ(Rocco)礼拝堂、と並びます。
5. Santa Cecilia 聖チェチリア聖堂
旧市街の南端で東西に走る、広いチェザーレ・バッティスティ通り(Viale Cesare Battisti)に出る前のチェザーレ・カントゥ通り(Via Cesare Cantu)にあります。
聖堂の前はコリント式の柱頭飾りのある円柱が並ぶ柱廊になっています。通りの反対側を歩いていると建物の前のポルティコと思ってしまい、聖堂とは気づかずに通り過ぎてしまいそうです。
特に聖堂の先には観光客の目当ての一つの塔 (Porta Torre)が目立って見えているだけに気を取られがちです。
13世紀初めの建立で、16世紀後半に再建されましたが、正面は17世紀に改築され多くの人物像が外壁を飾っています。
入口上には崇拝教会(Chiesa dell Adorazione)と書かれており、チェチリア(Cecilia)の文字は見えません。
聖堂内はバロック様式の単廊式です。
中央主祭壇には聖母降誕のほか、両側の側壁にはフィリッポ (Filippo Abbiati)作の聖母の生涯の絵が飾られています。
17世紀早々にはチェチリアの祭壇が設けられています。
主祭壇の上の聖ヘレナが十字架をもって立ち、両脇にはダヴィデ王とソロモン王が矜持している像は1688年にバルベリーニ (Giovanni Battista Barberini)が作成したものです。
側壁に飾られた絵画の周囲や片蓋柱、天井のフレスコ画の周りにも浮彫だけでなく立体的なスタッコ像で飾り立てられ、コーニスには植物の浮彫が施され、多くのプットが自由に飛び回っている非常に華やかな聖堂です。
入口の両脇に聖トマスと聖アウグストの像が並び、天井には聖十字架を運ぶ天使と聖チェチリアが描かれています。
6. Sant'Abbondio 聖アボンディオ聖堂
大聖堂(Duomo)からは1.6kmほど離れており、コモ・サンジョバンニ駅からも1km以上離れています。
緩やかに曲がった坂道を上って行きますが、近くに行くまで木々で聖堂は見えにくい場所にあります。少々不便な場所ですが、訪問するだけの価値のある聖堂です。
初期ロマネスク様式で、ロンゴバルドーロマネスク様式と呼ばれる古い構造の聖堂です。
5世紀から存在していた聖堂をコモの司教であった聖アボンディオが改修し、1013年には司教座のある大聖堂となっています。なお、後に聖アボンディオの聖遺骨は現在の大聖堂(Duomo)に移葬されています。
1095年6月30日にウルバン2世法王に奉献されています。
聖堂正面の円形アーチの基端には鷲と動物の顔が彫られています。同心円状に唐草模様や組紐模様のアーチが階段状に並び、組紐の輪の中には鳥や獣の姿が認められます。
10mほど突き出した後陣を挟むような形で左右対照に二本の四角形の鐘楼が聳え、アーチ型の窓が並んでいます。
後陣の外壁は半円形の柱に縦で分割され、ロンバルド帯で水平に仕切られています。
上下二段の窓の周りはアーチ型に唐草模様や組紐模様や動物や鳥の浮彫で装飾されています。
聖堂に入るとナルテックスの名残とも言える構造があり、上にオルガンが置かれています。
身廊の両側には二列に側廊が並ぶ五廊式で、袖廊の無いバシリカ様式です。
五廊式の聖堂は、ミラノの大聖堂やピサの大聖堂のような大きな聖堂では見られますが、このような小さな聖堂が五廊式になっているのは珍しく、身廊の両脇に6本の円柱が並び、側廊にも6本の円柱が並びます。
従って柱が乱立しているように見え、森林の中にいるような印象を受けます。
柱頭飾りもよく見ると一律ではなく、代替品を使用したと思われます。天井は木組みの平天井です。
内陣の奥のアプシスには1300年代に描かれたキリストの生涯の大きなフレスコ画を見ることができます。正面は最上段に祝福のポーズをとるキリストの座像があり、上から、ご訪問、降誕を羊飼いに知らせる天使、神殿奉献、磔刑と並び、向かって右側の最上段に洗礼者ヨハネが立ち、エジプト逃避、悪魔の誘惑、キリストの捕縛、十字架降下と並びます。
向かって左側の最上段には聖母が立ち、眠る三人のマギに降誕を告げる天使、キリストの洗礼、エルサレム入城、十字架を担いカルバリオの丘に向かうキリスト、が描かれています。
洗礼者ヨハネの右手に使徒聖パオロ、聖母の左手に使徒聖ピエトロが描かれ、それぞれの下にもキリストの生涯が描かれています。
画面を仕切る半円柱には聖職者や人物だけでなく、動物も紛れて描かれています。
7. その他の聖堂
コモ・サンジョバンンニ(Como San Giovanni)駅前を直進して200mほどの交差点の手前に、Santa Maria di Loreto聖堂(18世紀建設)があり(中には入れません)、
そこから旧市街の西端を南北に走るヴァレーゼ通り(Viare Varese)を500mほど南下すると、右側に大きなSantuario del Santissimo Crocifisso 修道院(16世紀後半の建設で19世紀に改修)が見えてきます(中には入れません)。
更にイタリア・リベラ通り(Via Italia Livera)を南下し、途中でチガリニ通りに左折して、一本東のルイージ・カドルナ通り(Via Luigi Cadorna)で右折して南下し、ミラノ通り(Via Milano)に出たところに、San Bartolomeo聖堂があります。
ミラノ通り(Via Milano)を400m進み、ロータリーからナポレオナ通り(Via Napoleona)に進み、サン・ロッコ広場(Piazza San Rocco)の先に、San Rocco聖堂があります。
コモ・ラーゴ(Como Lago)駅から湖岸に向かい、ロータリーを北東方向のトルノ通り(Via Torno)方面に進むと、右側に、Sant'Agostino聖堂(16世紀建設の三廊式の聖堂を18世紀に改築)が見えます。
その他、旧市街のなかにも多くの聖堂があります。一つ一つ丁寧に廻って行くことはできますが、昼に閉鎖する聖堂もあり、中に入れる時間が限られていますので、日帰りで訪問する場合には、目的の聖堂を決めてから訪問することをお勧めします。